未来に繋げる食育

地域に眠っていた鰹節の原型

潮かつおが繋ぐ西伊豆の未来

江戸時代からつくり続けられている鰹節の原型「潮かつお」は、鰹を塩漬けにした伝統的な保存食品です。

潮かつお

お出汁のはじまりといわれる「潮かつお」とは

潮かつおの塩漬け工程

潮かつおは鰹の塩蔵品です。
人類は古来より食材の保存に塩を活用してきました。
塩漬けにより水分が抜けると、微生物が寄り付かなくなり高い保存性を維持できるのです。

冬のはじめ、内臓を取り除いた鰹のお腹に大量の塩を詰め込み二週間ほど塩漬けにします。
西伊豆田子地区では、冬の西風に三週間ほどさらし、さらにじっくりと水分を抜き同時に熟成を進めます。
田子地区ではこうして出来上がった潮かつおを、正月魚(しょうがつよ)と呼び、お正月には神棚へお供えするなど、神事を兼ねた縁起物として伝えられてきました。

需要が減り生産者が激減

田子地区は古くから鰹の一本釣りで栄えた漁師町です。
ほんの40年ほど前までは、漁師をはじめ加工用の道具を作る職人や加工業者・商人など鰹に関わるたくさんの職人で賑わっていました。
しかし今では日本近海で鰹が獲れなくなってしまい鰹漁専門の漁船が一隻もなくなってしまったのです。

2007年当時「潮かつお」は、田子地区の伝統として残っていた正月飾りの縁起物として利用する本数のみ細々と生産されていました。
生産は完全予約制で、年間300本程度になり生産者はたったの二軒だけになっていました。

西伊豆しおかつお研究会をサポート

2009年7月、西伊豆の食文化を守るため生産者のカネサ鰹節商店さんと地元の有志とともに「西伊豆しおかつお研究会」を立ち上げました。
かつて潮かつおは全国で生産されていましたが、今では西伊豆町田子地区でしか生産されていません。
「私たちが足を止めたら一つの食文化が途絶えてしまう。」そう危機意識を持ち活動しています。
潮かつおの生産が衰退した理由を探り、現代人の舌に合う加工・調理方法を開発しています。

西伊豆しおかつおうどん

ご当地グルメでの町おこし

地元の有志が立ち上げた町おこし団体「西伊豆しおかつお研究会」は町内外のイベントに積極的に参加しています。西伊豆町の特産品でもある潮かつおを使って町の魅力や特産品のPRし、より多くの方に西伊豆町を知ってもらい、地域産業の活性化を目指す団体です。西伊豆で昔しから食べられてきた潮かつおを使って味付けした「しおかつおうどん」。鰹だしと香ばしく焼き上げた潮かつおの独特な旨味がくせになるうどんです。

潮かつおの食育活動

学校給食による食育

潮かつおは学校給食にも使われています。定期的に生産者が学校に赴き、地域の伝統食材でもある潮かつおを使った給食を子供たちと一緒に食べる日があります。地域の食文化や家庭での潮かつおの食べ方など生産者の話しを交えながら交流し、地域の食文化を学ぶとても楽しい時間です。

郷土愛を育む

郷土愛を育む授業

昭和の初めまで、かつお・まぐろの水揚げ高が全国一位を誇った西伊豆町の歴史や、潮かつおの製造方法、地域経済とのかかわりまで学びます。地域の歴史を学ぶことにより、長年受け継がれてきた伝統食材潮かつおの価値の創出や未来へ残してゆく活動です。